Windows Store からインストールした Thunderbird(MSIX 版)は、従来のデスクトップアプリのように簡単にはスタートアップに登録できず、PC を起動しても自動で立ち上がらないという問題があります。
この記事では、その原因と、オープンソースのシンプルなツールを使ってこの問題を解決し、Store 版 Thunderbird を自動起動させる具体的な手順を解説します。
なぜ Store 版 Thunderbird は自動起動が難しいのか?
この問題は、Windows Store アプリが採用している「MSIX」というパッケージ形式に起因します。
従来のアプリ(exe 形式)は、PC 内の固定された場所(例: C:\Program Files\...
)にインストールされ、その exe ファイルへのショートカットをスタートアップフォルダに置けば自動起動しました。
一方、MSIX でパッケージ化された Store 版アプリは、セキュリティと安定性のために隔離された環境(サンドボックス)で動作し、その実体のパスはユーザーから直接は見えない動的なものになっています。
そのため、従来のショートカットを置く方法では、起動対象の exe ファイルを見つけられず、自動起動が機能しません。
解決策:thunderbird_launcher
を利用する
この問題を解決するために、thunderbird_launcher という便利なツールが GitHub で公開されています。
これは、Store 版 Thunderbirdを 起動するための非常に小さな「ラッパー」または「ランチャー」と呼ばれるプログラムです。
このランチャー自体は従来の exe ファイルなので、これをスタートアップに登録することで、間接的に Store 版 Thunderbird を呼び出すことができます。
設定手順(ステップ・バイ・ステップ)
設定は簡単で、3 つのステップで完了します。
Step 1: thunderbird_launcher.exe
のダウンロード
- まず、
thunderbird_launcher
の リリースページ にアクセスします。 - 最新バージョンの「Assets」セクションにある
thunderbird_launcher.zip
をクリックしてダウンロードします。
Step 2: ファイルの解凍と配置
- ダウンロードした
thunderbird_launcher.zip
を解凍します。中にはthunderbird_launcher.exe
というファイルが 1 つだけ入っています。 - この
thunderbird_launcher.exe
を、PC 内の管理しやすい任意のフォルダに移動させます。- 推奨場所:
C:\Users\あなたのユーザー名\Documents\Tools
のような、パスに日本語やスペースを含まないフォルダを作成して、そこに置くとトラブルが起きにくいです。
- 推奨場所:
Step 3: スタートアップへのショートカット登録
最後に、Windows のスタートアップフォルダに、このランチャーのショートカットを登録します。
- キーボードの
Win
+R
を押して、「ファイル名を指定して実行」ウィンドウを開きます。 - 入力欄に
shell:startup
と入力し、OKボタンを押します。 - 「スタートアップ」と書かれたフォルダが開きます。
- 先ほど配置した
thunderbird_launcher.exe
を右クリックしながら、この「スタートアップ」フォルダへドラッグ&ドロップし、表示されたメニューから 「ショートカットをここに作成」 を選択します。
これで設定は完了です。
次回 PC を起動した際に、自動で Thunderbird が立ち上がるようになります。
ツールの仕組みと安全性について
仕組み
このランチャーは、内部で何をしているのでしょうか。
ソースコードは非常にシンプルで、Windows の ShellExecute
という機能を使い、HKEY_CURRENT_USER\Software\Microsoft\Windows\CurrentVersion\App Paths\thunderbird.exe
というレジストリに保存されている実行ファイルのパスを指定して呼び出しているだけです。
これにより、MSIX パッケージの複雑なパスを意識することなくアプリを起動できます。
安全性と注意点
重要: 以下の点を理解した上で、自己責任で実行してください。
- ウイルス対策ソフトの誤検知:
thunderbird_launcher.zip
は、単一の実行可能ファイル(exe)のみを含む zip ファイルです。
このような形式は、ウイルス対策ソフトによって「潜在的に迷惑なアプリケーション(PUA)」などと誤検知される可能性があります。 - 透明性の担保: このツールは、ソースコードが完全に公開されており、GitHub Actions という仕組みを使って自動でビルドされています。
リポジトリの「Actions」タブを見れば、公開されているソースコードから exe ァイルが生成されるまでの全工程(ワークフロー)を確認できるため、第三者による意図しないコードの混入がないかチェックでき、透明性は非常に高いです。
もし不安な場合は、ご自身でソースコードをダウンロードし、ビルド環境を整えて exe ファイルを生成することも可能です。
まとめ
Windows Store 版の Thunderbird は、MSIX パッケージの仕様上、通常の自動起動設定ができません。
しかし、thunderbird_launcher
のようなラッパープログラムをスタートアップに登録することで、この問題をスマートに解決できます。
設定は簡単ですので、Store 版 Thunderbird の自動起動でお困りの方は、ぜひ試してみてください。
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